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ピンポン。 チャイムが鳴った。父はまだ仕事から帰ってこない。彩はイスから立ち上がり、玄関へ向かった。 「はい?」 「あたし」 「ああ」 彩はチェーンをはずし、ドアを開けた。職場の同僚の平杉加代子だ。 「こんばんは」加代子は「ちょっといいかなあ」ともう靴を脱いでいる。 「どうぞ」彩も笑顔で迎えた。 「お邪魔しまーす」 「お父さんはいないよ」 「そっか」 二人は彩の部屋に入った。 「まだ暑いね。ウーロン茶でいい?」 「いいよ」 加代子は畳の上にすわり、両膝を抱えた。彩はドリンクを運んできた。机にトレイごと置くと、楽しそうな顔をしてベッドに腰を下ろした。 「加代子残業だったの」 「ウン」 「あ、そうだ」彩は机に手を伸ばし、ノートを加代子に手渡した。「これ見て。絵コンテ書いたの」 「絵コンテ?」 「あたしはねえ、まずノートにだいたいのラフスケッチ書いて、それ見ながら本番の原稿に描くの」 「漫画家ってみんなそうなの」 「ほかの人は知らないよ」 「アウトロー」 「そう。自信作。これで新人賞取って一気にプロデビューよ。このオンボロアパートともお別れね」 つづく |
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