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昭和のプロレスは、全日本プロレスと新日本プロレス。このメジャー2団体がライバル関係にあった。全日本プロレスのジャイアント馬場社長と、新日本プロレスのアントニオ猪木社長は、決して仲がいいとは言えない。むしろ敵・味方の間と言ったほうがいい。 そのため、全日本の選手と新日本の選手が対戦するのは、夢のまた夢だった。今思い返すと、そういう状況のなかで、ジャイアント馬場・アントニオ猪木VSアブドーラ・ザ・ブッチャー・タイガー・ジェット・シンというあり得ないタッグマッチが実現したことがある。文字通り、「夢のオールスター戦」のメインエベントだ。これも、ボーダーがあるから、「夢の顔合わせ」になるのかもしれない。 こういう企画ではなく、個人の思いで、「○○と対戦したい」という場合、社長が許さなければ実現はしない。それを振り切るとしたら、その団体を辞めてフリーになるしかない。いや、フリーといっても自由ではない。何年契約というものがあるから、ビジネスである以上、約束を破れるわけがない。 今回、長州力が新日本プロレスの現場監督に復帰した。予想通り、次々と方向性を打ち出している。ただ、発言の真意は、活字になったコメントだけではわからない。 たとえば、長州力はこういう特徴がある。インタビューなどで、「ない」と言っても実際はわからない。ZEROー1の橋本真也と対決する可能性は? 長州本人は、「ないな」と即答。長州に詳しいインタビュアは、「てことは、あるってことですか?」と突っ込む。しかし長州は、「ない。ないと言ったらない」としか答えない。そして事件が起きる。 橋本真也が記者会見の真最中に、長州力が突如現れる。 「橋本テメーこらあ、誌面使ってなにが言いたいんだこらあ!」 「なに!」 「噛み付くのか? 噛み付かないのか? どっちなんだこらあ」 「あんたにそんなこと言われる筋合いはねんだよ!」 「言ったなこら。その言葉飲み込むなよテメー」 その場に居合わせた記者やカメラマンは大喜びだ。長州力ほどマスコミに話題を提供してきたプロレスラーもいない。 あまりにもプロレス的な騒動だが、もちろん台本などない。長州も、相手が橋本なら間違いなく「プロレスラーとして反応するだろう」と読める。不仲のようで、心は微妙に通じていた。実力はお互いに認めていたのだ。 ご存知の通り、二人の対戦は実現した。 だから長州力はわからない。インディーが嫌いというのも、どこまで本心かわからない。実際、天を衝く勢いの頃の新日本プロレスは、グレート小鹿をリングに上げた。あれほど嫌っていた大仁田厚と自分自身が対戦した。断っても、断っても、大仁田はあきらめない。そのド根性を、長州力は褒め称えた。「自分が彼の立場ならできない」と。 鎖国と言っても、全く他団体と交わらないということではないと私は思っている。約20年長州力を見てきて、そう感じる。この洞察には自信がある。 全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦の優勝決定戦。ザ・ファンクスが先に入場し、対するブロディとスヌーカも入場。そのとき、テンガロンハットをかぶった大男が一緒に歩いてきた。まさか! 「ハンセン? スタン・ハンセン!」 会場は度肝を抜かれた。今なら事件にはならない。しかし当時は、新日本プロレスのトップ外国人レスラーが、全日本プロレスの会場に来るということは、もうファンも関係者も、「これはひょっとして何かが起きる!」と胸が騒ぐ。 「垣根があるから事件になる」 「垣根があるから、それを飛び越えてきた人間は、相当本気とわかる」 この長州監督のポリシーのほうが、正しいように思えてきた。ライオン丸のマスクをかぶって他団体に遊びに行く。一見ファンサービスになって面白いかもしれないが、闘いを忘れたらプロレスではなくなってしまう。黒船に向かって小船を漕ぎ出した吉田松陰を、長州力だったら捕まえない。リングに上げる。 ビッグマウスも、船木誠勝も、これで新日本プロレスのリングに上がるのは困難になった。 「それでも新日本プロレスのリングに上がりたい」 「○○とどうしても対戦したい」 そういう本気の部分が見えれば、リングに上げると思う。簡単には上げないというだけで、絶対に他団体との交流はないということではない。私はそう踏んでいる。 では、すでに開戦しているZERO−1MAXとの闘いはどうなるのか? 長州監督は、MAXの若手の意気込みをかなり褒めていたので、まさか打ち切りにはしないと思うが・・・。 ともかく、長州力が出てきてガラリと変わった。新日本プロレスが変わった。誌面も変わった。このディープなインパクトが時代の要請か。人に理解されないことを、ひんしゅくを買うことを、全く恐れていない長州力。30年のプロレス人生で創り上げた強烈な個性が武器だから、どうしようもない。 「♪あいつが投げると嵐吹く。あいつが打つと稲妻光る。ただでは済まない凄い奴」 長州力はまさに、BANBA.BANのような男だ。 長州力
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